人狩りは終わらない/ロノ・ウェイウェイオール(文春文庫)

焦がれた再会を心から喜びたい作品である。前作の『鎮魂歌は歌わない』が出たのが三年ほど前。その後音沙汰がなく、続編が紹介されることはもうないのだろうと諦めていただけに、喜びもひとしお。ロノ・ウェイウェイオールの第二作『人狩りは終わらない』である。
物語は、前作の後日談だ。アウトローの生活に身をやつすワイリーは、娼婦の真似事をしていた娘を殺されたことを知り、裏社会に通じる友人のレオンの助けを得て、復讐を果たした。しかし、復讐は彼に何ももたらさず、前作から一年たった今も、やはりチンピラの生活から抜け出せないままで、思いを寄せる元娼婦のアリックスとの半端な距離も踏み越えられないでいる。そんなとき、前作でかかわった娼婦のミリアムから、SOSの電話がかかってくる。トチ狂った男に拉致られ、連れ回されているのだという。さっそくラスベガスへと救出に向うワイリーだったが、一筋縄ではいかない悪党を相手に、苦戦を強いられることに。
主人公のダメ男ぶりを浮き彫りにする一人称こそが、本作のアイデンティティといっていいだろう。くどくどと饒舌に流されないところはハードボイルド的で、予測を許さない物語展開の面白さは、上質の犯罪小説でおなじみのものだ。社会からドロップアウトしてしまった男の自己回復の物語だと思うが、愛する女性との関係にしても、女の救出劇にしても、思うにまかせない主人公はもがき続ける。そんな彼を突き放す作者の距離感がいい。残る一作、ワイリーのたどり着く先を、ぜひ見届けたいと思う。
[ミステリマガジン2011年7月号]

人狩りは終わらない (文春文庫)

人狩りは終わらない (文春文庫)