悪童 エリカ&パトリック事件簿/カミラ・レックバリ(集英社文庫)

ここのところ台頭めざましい北欧の作家勢の中で、〈ミレニアム〉三部作のラーソンと肩を並べる最右翼は、間違いなくこのカミラ・レックバリだろう。彼女の〈エリカ&パトリック事件簿〉も、『悪童』でシリーズ三作目を迎える。主人公のカップル、小説家のエリカと刑事のパトリックの仲もとんとん拍子に進み、本作では長女が誕生。しかし仕事にかまけるパトリックのせいで、エリカは育児ノイローゼに悩んでいる。
そんなエリカのママ友の娘サーラが溺死し、その肺から石鹸水が見つかる。殺人を疑う警察は捜査を始め、パトリックは父親や隣人に疑いの目を向けるが。今回は、テレビの連続ドラマを思わせる登場人物間の愛憎劇がやや濃い目だが、読者の意表をつく謎解きにも依然冴えがある。さりげない社会派の視点にも、説得力があるのがいい。
[波2011年4月号]

悪童 エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

悪童 エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)