キラー・インサイド・ミー/マイケル・ウィンターボトム(米瑞英加・2011)

メガホンをとっているのは、イギリス出身の監督マイケル・ウィンターボトム。町の保安官助手をつとめる主人公のケイシー・アフレックは、上司である保安官のおぼえもよく、長年付き合っている恋人ケイト・ハドソンと愛し合っている。しかし、あるとき市民からの苦情を受け娼婦のジェシカ・アルバを町から追い出しにかかるが、ミイラとりがミイラとなり、彼女と秘密の情事を重ねる間柄となってしまう。さらにジェシカの挑発によって生来の暴力衝動に歯止めがきかなくなった主人公は、彼女を撲殺、その罪を町の有力者の息子になすりつけるようとする。しかし、隠蔽はたちまち綻びはじめる。
ソウル・バス風を狙ったと思しきタイトルバックが最高で、これだけでも一見の価値ありだが、下手に物語を現代に移し変えたりせず、一九五十年代のテキサスを舞台にしたあたりも正解で、この歪な物語を生んだ時代の空気と土壌をそのまま活かしている。ただし、ケイシー・アフレックの副保安官役はややミスキャスト気味。主人公には何か大事なものが欠落している筈なのに、ややもすると理性的に見えてしまうところに違和感がある。破滅へ突き進んでいくくだりを、あえて淡々と描く不気味さが原作にはあったが、映画ではそれが希薄。主人公の怪物的な人間像を描ききれていないせいではないか。捩れた物語を判りやすく映像化した点は、おおいに評価していいと思うのだが。
日本推理作家協会報2011年4月号]
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