巨人たちの落日(上・中・下)/ケン・フォレット(ソフトバンク文庫)

第二次世界大戦を舞台にした外套と短剣の物語『針の眼』でデビューしたケン・フォレットも、いまやベテラン作家の仲間入りを果たし、近年では歴史ものの分野にその執筆活動の軸足を移している。本作に先立つ『大聖堂』とその続編では、中世のイングランドを舞台に、その悠久の歴史をとくと覗かせてくれた、この『巨人たちの落日』はウェールズの田舎町から始まり、やがてヨーロッパ各地へと広がっていく。
貴族や軍人、炭鉱で働く少年や女権拡大の運動家など、さまざまな人々やその家族が織りなしていくのは、旧体制の崩壊と新世代の台頭というスケールの大きなドラマである。二十世紀初頭を襲った激動を鮮やかに描き出す群像劇は、まるでロマンに彩られた史実と虚構の綴れ織を見るようだ。
[波2011年4月号]

巨人たちの落日(上) (ソフトバンク文庫)

巨人たちの落日(上) (ソフトバンク文庫)

巨人たちの落日(中) (ソフトバンク文庫)

巨人たちの落日(中) (ソフトバンク文庫)

巨人たちの落日(下) (ソフトバンク文庫)

巨人たちの落日(下) (ソフトバンク文庫)