裏切りの代償 掃除屋クィン2/ブレット・バトルズ(RHブックス・プラス)

世界中のミステリ・ファンが集う〈バウチャーコン〉で、ベスト・スリラー賞に輝いたブレット・バトルズの『裏切りの代償』は、フリーランスの?清掃屋?ことジョナサン・ウィンが活躍する〈掃除屋クィン〉シリーズの第二作である。
今回舞い込んだ仕事は、ロスのドックに荷揚げされたコンテナの死体を始末することだった。しかし、死体と対面したクィンは、それがかつての命の恩人で元CIAスパイのマルコフであることに驚き、さらに知らぬ仲ではない彼の恋人ジェニファーが行方不明になっていることにショックを受ける。余計なことに関わるなという師の教えが頭を過りながらも、恩義を忘れられないクィンは、助手のネイトとともにジェニファーの行方を追うが、奇妙なことにその行く先々で、同じく彼女の身を案じるという謎の女ターシャと鉢合わせする。
中盤までは、ストイックにプロに徹する主人公像や復讐というテーマがやや重たく感じられ、もう少し遊び心があってもいいと思わせるが、後半舞台が東南アジアへと移ってからは、活劇を交えてファンの期待どおりの展開となっていく。元同僚のオーランドとの関係をめぐる葛藤など、前作から引き継がれたシリーズとしての興味を、さらに今後の展開へと繋げていくるあたりも、なかなかうまいものだと思う。
[ミステリマガジン2011年4月号]

裏切りの代償 掃除屋クィン2 (RHブックス・プラス)

裏切りの代償 掃除屋クィン2 (RHブックス・プラス)