ブローン・アパート/シャロン・マグアイア監督(2008・英)

ブローン・アパート』は、ロンドンのイーストエンドで夫やひとり息子と暮らす三人家族の妻役を、『シャッター アイランド』にも出ていたミシェル・ウィリアムズが演じる。彼女の夫は、警察で爆発物の処理の仕事をしているが、相次ぐ事件の緊張感からか心を病み、夫婦の関係もぎくしゃくしている。そんな彼女の心の隙間に入り込んだゴシップ専門の記者ユアン・マクレガーは、夫と息子がサッカー観戦に出かけた彼女の自宅で情事に及ぶが、アーセナルの試合の実況中継をしていたテレビは、信じられないような惨事を画面に映し出す。
ユアン・マクレガーはジャーナリストとして、ミシェル・ウィリアムズは犯人と目されるイスラム人の家族や夫の同僚だったマシュー・マクファディンに近づくなどして、それぞれテロ事件の真相に迫っていくが、そのミステリ的な要素は本作では二次的なもののようだ。後ろめたさから夢と現実の隙間におちこんだ妻が、さまざまな葛藤を経て、やがて再生していく展開が物語の中心だが、そんなテーマを象徴するかのように、ひとつひとつにテロ被害者のプロフィルを掲げた大きなバルーンがロンドンの空いっぱいに浮かぶ場面が印象的。『ブリジット・ショーンズの日記』を撮った、BBC出身のシャロン・マグアイアがメガホンをとっている。
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