ショパンの手稿譜／ジェフリー・ディーヴァーほか（ヴィレッジブックス）

昨年来日し、インタビューやファンとの交流イベントなどを通じて日本の読者の間では一段と親しみが増したジェフリー・ディーヴァーの、ちょっとユニークな企画の新作が届けられた。『ショパンの手稿譜』（ヴィレッジブックス）は、そもそも本国のアメリカではネット配信という形で読者に届けられた作品で、当代の人気作家十五人が参加してのリレー長編小説である。
Ｓ・Ｊ・ローザンやリー・チャイルドら錚々たる共演者たちが顔を揃える中、リーダーシップのタクトを振るのは勿論ディーヴァーその人で、ワルシャワで起きた殺人事件を皮切りに、偉大なる作曲家の楽譜をめぐって、歴史の闇に紛れた謀略の秘密を解き明かしていく。音楽の薀蓄をまぶした謎解きのハーモニーを引き出し、ツイストたっぷりのサービス精神で締めくくるディーヴァーの名指揮者ぶりを堪能されたし。
［波2011年1月号］

ショパンの手稿譜 (ヴィレッジブックス)