バッキンガムの光芒(ファージング3)/ジョー・ウォルトン(創元推理文庫)

『英雄たちの朝』『暗殺のハムレット』と続いたジョー・ウォルトンの歴史改変三部作〈ファージング〉も、いよいよ『バッキンガムの光芒』がラスト。一作ごとに交代するヒロインだが、今回はオクスフォードへの進学が決まっている十八歳の少女エルヴァイラである。彼女はある事情からスコットランドヤードの元警部カーマイケルに養女として育てられたが、女王への謁見という人生の一大イベントを目前に、義理の父親を巻き込み大きく運命を狂わせていく。
ミステリファン垂涎の趣向が光る先の二作に対し、本作では三作を通じてのクライマックスが一気に浮上する。ファシズムが影を落とし、陰謀が渦巻くもうひとつのイギリスが希望を取り戻す日は果たしてくるのか。固唾を呑んで、ページをめくっていただきたい最終巻だ。
本の雑誌2010年10月号]

バッキンガムの光芒 (ファージング?) (創元推理文庫)

バッキンガムの光芒 (ファージング?) (創元推理文庫)