ラスト・チャイルド/ジョン・ハート(ハヤカワ・ミステリ、ハヤカワ文庫)

デビュー作の「キングの死」、続く「川は静かに流れ」と、親と子の関係を主題に、テーマの咀嚼力と物語の力を見せつけたジョン・ハートの待ちに待った三作目は『ラスト・チャイルド』という作品だ。一年前に何者かに連れ去られ、行方不明となった妹のアリッサ。事件は一家の家族の絆を蝕み、家を出た父は音信を断ち、残された母親は心を病んでしまった。しかし警察も匙を投げた事件を、ただひとり十三歳の少年ジョニーだけは、双子の妹を取り戻すために追い続けていた。
作者にとって、家族の信頼回復の物語は興味の尽きないテーマのようだが、本作では複数の親子関係を対比させ、より複雑な絵柄を浮かび上がらせる。中盤までは、やや無鉄砲とも思える展開の広がりを見せるが、それが巧みに収束していく終盤は、息を呑む素晴らしさといっても過言ではない。平和な家族関係を取り戻そうとする主人公の一途な思いが胸を打つが、少年の成長をうかがわせるエンディングがまたいい。
本の雑誌2010年7月号]

ラスト・チャイルド (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1836)

ラスト・チャイルド (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1836)