衣裳戸棚の女/ピーター・アントニイ(創元推理文庫)

古典リヴァイヴァルの追い風に乗って登場したピーター・アントニイの『衣裳戸棚の女』という作品。わが国のファンの間ではあまり知られてないが、海の向こうでは「戦後最高の密室ミステリ」という評価もあって、映画「探偵スルース」や「アマデウス」でお馴染みのシェーファー兄弟による合作チーム*1の作品ときけば、気になる読者は多いと思う。
でもって、ぼくは個人的に、大いに買いだ。不可能状況の設定が見事だし、密室の構成の仕方も堂に入っている。そして、何より人をくった仕掛けが、笑わせてくれる。謎解きには、緻密さばかりじゃなくて、大胆さも必要ってことの良い見本になっている。キワモノという謗りがあっても不思議ではないが、パロディとして珍重するとかの次元ではなく、謎ときのクラシックとしての価値を結構高く評価してよいのではと思っている。
本の雑誌1997年3月号]

衣裳戸棚の女 (創元推理文庫)

衣裳戸棚の女 (創元推理文庫)

*1:「ベヴァリー・クラブ」の解説にもあるように、2001年に発表された自伝で、本作はピーター・シェーファー単独作であることが明らかにされた。ちなみに、「ベヴァリー・クラブ」とその次の Withered Murder は合作のようだ。