ロフト./エリク・ヴァン・ローイ監督(2008・白)

ベルギーでロングランを記録したというエリク・ヴァン・ローイ監督の「ロフト.」は、ロフト仕様のマンションの一室で、手錠でベッドに繋がれた血まみれの女性が死体となって発見されるのが物語の発端。どうやら犯人は、情事に利用するため部屋を共有する建築家のフィリップ・ペーテルスとその友人たちの中の一人らしいのだが、彼らは互いに自分じゃないと言い張るばかり。部屋への出入りに必要な特殊仕様の鍵は、それぞれが持つ五本のみ。五人の男たちの間には、仲間への疑心暗鬼が広がっていく。
バルト・デ・パウのオリジナル脚本は、四年を費やしたというだけあって、ミステリ劇としてよく練られている。過去のエピソード、死体発見の朝、警察の取り調べという時間軸に沿って行きつ戻りつしながら、事件の全体像を徐々に浮き彫りにしていく。それが見えきれない前半は、夫婦不和のエピソードと安っぽい不倫劇ばかりを見せられている気がして、やや気持ちが乗り切れないが、一転して終盤のパーティのシーンからの畳み掛けは観る側をはっとさせる。最後の着地点にもうひと工夫ほしいところだが、ミステリ劇の面白さは十分に味わえる。五人の男たちを演じる役者たちは初めてみる顔ばかりだが、スティーヴン・キング似のブルーノ・ファンデン・ブロッケや、粗野な若者を演じるマティアス・スクナールツなど、癖のあるいい役者たちを揃えている。    
日本推理作家協会報2010年1月号]
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