プロフェショナル/ロバート・B・パーカー(早川書房)

先日訃報が届けられたロバート・B・パーカーだが、前作『灰色の嵐』で復活を思わせる充実ぶりに感心させられたばかりだった。『プロフェショナル』は、そんなシリーズの最新作であり、37番目の新作だが、もしかしたら最後のスペンサーものとなるかもしれない作品だ。
女弁護士を通じて持ち込まれた依頼は、同じ不倫相手から強請られているという四人の女性からのものだった。彼女らの浮気相手ゲイリー・アイゼンハワーという男は、歳の離れた金持ちと結婚している女性ばかりを狙っては誘惑し、情事を楽しんでいる人物だった。しかし、その男と対面したスペンサーは、魅力的な女と関係するのは大切な趣味で、それを恐喝するのは生活の糧だと言い切る悪びれたところのない彼の態度に、共感に似たものを覚える。依頼人の夫で裏社会に通じる人物が介入してきたことをきっかけに、スペンサーはギャングのボスを巻き込んで事態の収拾を図ろうとするが、その矢先に予期せぬ殺人事件が起きてしまう。
往年のスペンサーが還ってきた、と安易に口にするつもりはないが、先に述べたように、これまた前作に続くクリーンヒットと言っていいのではないか。意表をついて、後半がらりと様相を変える事件の展開も見事だが、趣味を職業として実践する強請のプロフェショナルとスペンサーの間に芽生えるささやかな友情の物語にも飄々とした面白さがある。器用な人生を選択できない男たちの辿る運命が胸に迫る幕切れも、本作を非常に印象深いものにしている。
前作、本作と、パーカーはもうひと花咲かせる円熟の時期にさしかかっていたように思える。そんな矢先の急逝が本当に惜しまれる。
[ミステリマガジン2010年2月号]

プロフェッショナル (ハヤカワ・ノヴェルズ)

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