荒野のホームズ、西へ行く/スティーヴ・ホッケンスミス(ハヤカワ・ミステリ)

ティーヴ・ホッケンスミスの『荒野のホームズ、西へ行く』は、ウェスタン小説さながらに十九世紀のアメリカ西部を舞台にしたドイル作を本歌取りした異色のシリーズ第二作だが、今回、ホームズとワトスンならぬグスタフとオットーの赤毛の兄弟コンビは、カウボーイの職にあぶれて鉄道会社に就職。強盗団が出没するというサンフランシスコ行きの列車に乗り込むことに。
本作の肝は鉄路を舞台に繰り広げられる鉄道ミステリの楽しさにある。立ち回りから推理まで、大ネタ小ネタをふんだんに盛り込み、読者の荒野の旅を最後まで飽かさない。衝突を繰り返しながらも、絆の深さを物語る主人公兄弟のエピソードのひとつひとつが心にしみるのもいい。
本の雑誌2009年9月号]

荒野のホームズ、西へ行く (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1825)

荒野のホームズ、西へ行く (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1825)