拳銃猿/ヴィクター・ギシュラー(ハヤカワ文庫)

書店の店頭で「なんてタイトルなんだ!」と呆れた読者も多いことと思う(かくいうわたしもそう)ヴィクター・ギシュラーの『拳銃猿』である。しかし、内容にしたところが、この能天気というか、おポンチというか、しょうもないタイトル通りなのだから、すごい。”猿の橿〃と呼ばれる犯罪集団で銃の名手として鳴らす主人公のチャーリー。今日も今日とて、ポスの命令に従って、マイアミからやって来たギャングのために帳簿を二冊取り戻すために、ひと働きする。ところが、目当ての帳簿を手に入れたはいいが、FBIや警察を巻き込んでの争奪戦に発展。そんな中、仲間が次々殺され、チャーリーは窮地に立たされる。
作者のギシュラーの頭の中に「パルプ・フィクション」があるのは想像に難くないが、ほどよい乗りとテンポの良さと、抜群のリーダビリティを誇っている。タランティーノ映画ほどのお馬鹿なストーリーに徹してないのが残念といえば残念だが、悪党たちのジャムセッションに加えて、色恋沙汰まであるサービス精神は大いに買える。続編が待ち遠しい。
[本の雑誌2003年5月号]

拳銃猿 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

拳銃猿 (ハヤカワ・ミステリ文庫)