壊れた偶像/ジョン・ブラックバーン(論創社)

〈論創海外ミステリ〉がぽつりぽつりと紹介しているイギリスのジョン・ブラックバーンは、オカルト・スリラーの書き手としてややB級寄りと思われているフシがあるが、五十年代末の作品『壊れた偶像』(松本真一訳/論創社二○○○円)を読めば、ストーリーテラーとして侮れない作家であることに改めて気づく。川に浮かんだ女の変死体をめぐって、カーク将軍率いる英諜報局のチームが事件の背景を暴いていくが、捜査過程の意外にツイストのきいた展開や、陰謀の奇想天外な面白さなど、読者をひきつけるツボは多い。通俗な語り口の中に時折のぞかせる精神医学や社会性の懐の深さも読者を惹きつける大きな要素となっている。
本の雑誌2009年5月号]

壊れた偶像 (論創海外ミステリ)

壊れた偶像 (論創海外ミステリ)