鎮魂歌は歌わない/ロノ・ウェイウェイオール(文春文庫)

ロノ・ウェイウェイオールという新鋭の『鎮魂歌は歌わない』は、娘を殺された主人公ワイリーが、無頼から足を洗って犯人への復讐を誓うという、シリーズの第一作として、あまりに「らしくない」幕開きにちょっと驚く。しかし、やがて友人や妻たちとのやりとりを通じて、家族を失った男の悔恨や孤独が切々と語られ、主人公の心情が次第に浮き彫りにされていく。
一方、次々に女を切り裂く得体知れない犯人の正体も不気味で、行き着くところがなかなか見えない物語を、読者は心地よく彷徨うことになる。幕切れのカタルシスも見事だが、本作がどう次作に繋がっていくのか、とても気になる。
[本の雑誌2008年10月号]

鎮魂歌は歌わない (文春文庫)

鎮魂歌は歌わない (文春文庫)