フィクサー/トニー・ギルロイ監督(2007・米)

今年のエドガー賞における映画部門で、「ノーカントリー」などの強敵を抑えて栄冠を勝ちとったのがこの『フィクサー』だ。ジョージ・クルーニー演じる弁 護士のマイケル・クレイトンはニューヨークの大手法律事務所で働いているが、経営者から揉み消し専門の便利屋(フィクサー)として使われるしがない身の 上。深夜の仕事を終え、帰宅の途中、そんな彼の運転する車が爆破される。間一髪のところで命拾いをしたものの、この企みの背景には、俄に和解交渉の話がもちあがった農薬訴訟をめぐるトラブルがあった。そこから物語は時間を遡り、クレイトンの四日間を丁寧に辿り始めるわけだが、リーガル・スリラーの緊張感と 並行して、妻には去られ、しくじった副業の借金に追われる逆境にありながら、わが子への愛情、仲間への友情に厚い愛すべき主人公像が浮き彫りにされてい く。すべてが明らかになり、最後の最後で繰り返される冒頭のシーンが実に快感。脚本・監督のトニー・ギルロイの技に拍手を送りたい。
[日本推理作家協会報2008年7月号]