そして友よ、静かに死ね/オリヴィエ・マルシャル監督(2011・仏)


フィルム・ノワールの末裔ともいうべき〈あるいは裏切りという名の犬〉を撮ったオリヴィエ・マルシャル監督の新作〈そして友よ、静かに死ね〉は、七十年代の初頭、フランスで民衆からもモモンの愛称で親しまれた実在のギャング、エドモン・ヴィダルの物語である。自費出版されたという自叙伝をもとに、モモン役を名優ジェラール・ランヴァンが演じ、すでに還暦を迎え静かな日々を送るモモンのもとに、かつての相棒セルジュ(チェッキー・カリョ)が逮捕されたという知らせが届くところから物語りは始まる。
少年時代にめぐり合い、一緒に数々の悪事に手を染めてきた親友をどうしても見殺しにできないモモンは、昔の仲間たちの手を借り、獄中のセルジュに救いの手を差し伸べようとする。しかし、彼はかつての仲間にはどうしても言えない秘密を胸に秘めていた――。ややアナクロにも映る現在と過去を行き来する手法は、クラシックなギャング映画へ回帰しているかのようだ。男たちの友情と裏切りの物語という手垢のついたパターンをなぞるあたりも同様で、共同で脚本も手がけているオリヴィエ・マルシャル監督の確信犯的な狙いを見て取ることができる。フィルム・ノワールの世界にも通じる本作の佇まいと風格は、そんなオマージュと徹底したこだわりの産物だろう。 
日本推理作家協会報2012年10月号]
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