償いの報酬/ローレンス・ブロック(二見文庫)

ローレンス・ブロックが30年という長きにわたり発表してきたマット・スカダーものも、前作『すべては死にゆく』でついに幕が降ろされたと思っていたファンは多いだろう。しかし、作者は思いもかけなかった形でシリーズの新作を六年ぶりに届けてくれた。
その『償いの報酬』は、まずその時代背景に驚かされる。時系列では『八百万の死にざま』から一年後にあたり、そこにはAA(アルコール依存を克服するための集り)に通い、アル中の克服に取り組む主人公が登場し、禁酒プログラムを実践していた昔のなじみが殺された事件を非公式に調べることに。過去の人生を振り返る主人公の姿をノスタルジックに描くシリーズ番外編である。
[2012年10月号]

償いの報酬 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

償いの報酬 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)