滅亡の暗号/ダスティン・トマソン(新潮文庫)

二○一二年人類滅亡説をご存じだろうか? 中央アメリカに古代から栄えたマヤ文明の長期暦は本年十二月までしかないことから、それを世界の終わりと解釈する考え方で、ノストラダムスの予言にあった一九九九年の恐怖の大王とともに、世界終末論のひとつとして喧伝されてきたものだ。ダスティン・トマスンの『滅亡の暗号(上・下)』(新潮文庫)は、その説に材をとっている。
と書くと、さてはトンデモ本か、と早合点されそうだが、さにあらず。作者は名作『フランチェスコの暗号』の合作チームの片割れで、先のコンビ解消後八年をかけて本作を上梓した。ロサンジェルスに突如発生した致死性のプリオン病をめぐり、そのパンデミックを食い止めるために命がけで奔走する医師と言語学者の男女二人の活躍を描いていく。医学サスペンス+暗号もの、そして最後は秘境小説の要素までもが加わる盛り沢山のエンタテインメント作である。
[波2012年10月号]

滅亡の暗号〈上〉 (新潮文庫)

滅亡の暗号〈上〉 (新潮文庫)

滅亡の暗号〈下〉 (新潮文庫)

滅亡の暗号〈下〉 (新潮文庫)