月に歪む夜/ダイアン・ジェーンズ(創元推理文庫)

かつて女一人に男二人の組み合わせを指してドリカム状態という言葉が流行ったが、英国から登場の新鋭、女性作家ダイアン・ジェーンズの『月に歪む夜』は、そんな三人組にひとりの女性が加わったことから、微妙な均衡状態にひびが入っていく。ヒロインは新参の少女に、嫉妬と賞賛の入り混じった複雑な思いをつのらせていくが。
往年のルース・レンデルを彷彿とさせる心理描写もあるが、複雑に絡まる人間関係の綾が思いもかけない方向へと向かう様を、ヒロインの視点からいきいきと描いている。現在と過去の時制を並行させ、その両者を結びつけるミステリ的な手法も実を結んでおり、十分に合格点のやれる新人のデビュー作だろう。
[波2012年10月号]

月に歪む夜 (創元推理文庫)

月に歪む夜 (創元推理文庫)