この声が届く先/S・J・ローザン(創元推理文庫)

同じシリーズでも、一作ごとに作風を描き分ける多彩さは、すでに短編集でもおなじみのS・J・ローザンだが、今度の『この声が届く先』には驚かされた。このシリーズでは探偵コンビが一作ごとに主役(語り手)を交替するが、今回は、何者かによって誘拐された相棒のリディアを無事取り戻すために奔走するビルの物語である。
イムリミットは12時間。犯人からのヒントを解きながら、ビルはリディアの居場所に迫っていく。ITに強い血縁のライナスとその女友達や、強面な売春組織の面々など脇役陣も大活躍。ディーヴァーに追いつけ、追い越せの意気込みが伝わるノンストップ・サスペンスだ。
[波2012年9月号]

この声が届く先 (創元推理文庫)

この声が届く先 (創元推理文庫)