追撃の森/ジェフリー・ディーヴァー(文春文庫)

まさに『追撃の森』(文春文庫)。今度のジェフリー・ディーヴァーは、ウィスコンシン最大の州立公園に広がる森林地帯を舞台に繰り広げられる、追う者と追われる者の物語だ。ある晩、謎の緊急通報で人里離れた湖畔の別荘に駆けつけた女性保安官補のブリンは、そこで若い夫婦の死体を発見する。自分にも銃を向けてきた二人組の殺し屋から逃れるため、別荘を訪ねてきたという女性とともに、彼女は深い森へと分け入っていく。
全体のほぼ八割を占める二部構成の前半は、殺し屋チームと保安官補チームの間で手に汗握る追跡劇が繰り広げられる。しかし作者の本領発揮は、さらにその一ヵ月後が描かれる第二部で、次々と覆されていく真相の数々に、読者は思わずページを遡りたくなるだろう。まさに伏線の妙味とサプライズの釣瓶打ち。おなじみのリンカーン・ライムは登場しないが、ディーヴァー節は本作でも健在だ。
[波2012年7月号]

追撃の森 (文春文庫)

追撃の森 (文春文庫)