果てなき路/モンテ・ヘルマン監督(2011・米)


ロジャー・コーマンに見いだされ、ニューシネマのカルト的な名作として今に伝わるロードムービー『断絶』(71)を世に送ったモンテ・ヘルマン。しかし、話題にはなったものの興行的には失敗し、その後、表の世界からフェイドアウトしたかに思われていたが(その間、他の監督がメガホンをとった『レザボア・ドッグス』や『バッファロー’66』などの企画もそもそもは彼のためのものだったという噂もある)、二十一年ぶりという新作長編映画『果てなき路』をひっさげて帰ってきた。
若手監督の有望株タイ・ルニャンに、ノースカロライナで実際に起きた事件を映画化する話が持ち上がった。その主演女優を探す過程で、監督はネット上でほとんど演技経験のないシャニン・ソサモンの不思議な魅力を見いだす。しかし、撮影が進むにつれて異様なまでに彼が主演女優に入れ込んだだめ、現場では次第に出演者やスタッフの間に不協和音が流れ始める。
映画制作の過程を描くという点で、『アメリカの夜』を連想したりもするが、作品を包みこむ空気は暗く湿っていて、ノワール映画を思わせる。カメラが現実と非現実の隙間に入りこんでいくような展開はときに幻想の領域へと越境するが、虚構と現実の境目に無数にちりばめられた断片には、謎やその解釈の手がかりが暗示されているようで、単なるメタ映画として片付けられない緊張感がある。見終えたあともどこか判然としない何かが残るが、深入りすればするほど、観るものをとらえて離さない不思議な映画といっていいだろう。
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