スウィッチ/フレデリック・シェンデルフェール(2011・仏)


以前映画も大ヒットした『クリムゾン・リバー』(創元推理文庫)の作者ジャン=クリストフ・グランジェが共同脚本(製作も)に加わった『スウィッチ』は、いかにもフランス・ミステリらしい出だしから始まる。互いの住居交換を支援するサイトを利用して、モントリオールを発ちパリでバカンスを過ごすことになったカリーヌ・ヴァナッス。しかし、到着から一夜明け、原因不明の頭痛とともに目覚めた彼女は、殺人容疑で警察に逮捕されてしまう。取り調べで、エリック・カントナの警部に人違いだと訴えるが、いつの間にか利用したサイトは姿を消し、旅客機の登場記録も残されていなかった。絶体絶命の窮地に立たされた彼女は、隙をついて逃亡を図る。
物語の後半は、警察の手を逃れたヒロインが、自らの力で謎を解き明かしていくという定石の展開になるが、前半からは想像のつかなかったタフぶりを発揮するなど(ただし一応伏線は用意されている)、やや唐突な感がなきにしもあらず。ただ、解き明かされるミッシングリンクは、医学ミステリなどで先例もありそうだが、なるほどと感心させられた。監督は、『スパイ・バウンド』や『裏切りの闇で眠れ』のフレデリック・シェンデルフェールで、自ら出演もしている。
日本推理作家協会報2012年1月号]
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