ミッション:8ミニッツ/ダンカン・ジョーンズ監督(2011・米)


SF映画だとは判っていても、「このラスト、映画通ほどダマされる」というあざといコピーを見せられては素通りできないダンカン・ジョーンズの『ミッション:8ミニッツ』。デヴィッド・ボウイの息子という重圧を跳ね返して成功を収めた『月に囚われた男』に続き、この監督第二作ではハリウッド進出を果たしている。シカゴの都心へと向う朝の通勤列車に仕掛けられた爆弾を発見し、その犯人を見つけ出すというのが、主人公ジェイク・ギレンフォームに課せられた使命だ。自分が誰であるかも判らぬまま、政府機関によって爆破事件直前の八分間を繰り返し体験させられる主人公。彼の不可思議な任務とすでに起きてしまったテロ事件の関係は何なのか?
同じ時間を反復するたびに事件の輪郭が明らかになっていくリピート型犯罪映画のバリエーションといえなくもないが、先のコピーはやや的外れで、主人公の捜査活動は行き当たりばったりだし、ミステリ的な趣向の掘り下げはどちらかといえば浅い。むしろタイムスリップやパラレルワールドを連想させる展開はやはりSF的で、クライマックス直前のストップモーションで終わっていれば、恋愛映画としても見事に収斂したに違いない。本作のそんなロマンチックな側面は、ミシェル・モナハンに加え、主人公のオペレーションを担当するヴェラ・ファーミガの魅力に負うところが大きい。
日本推理作家協会報2012年1月号]