特捜部Q-キジ殺し-/ユッシ・エーズラ・オールスン(ハヤカワ・ミステリ)

ユッシ・エーズラ・オールスンの『特捜部Q-キジ殺し-』は、カール警部補とアシスタントのアサドという凸凹コンビでスタートしたシリーズの第二作。本作では、コペンハーゲン警察が誇る未解決重大事件担当部署に、さらに癖のある新人女性がスタッフに加わる。
休暇あけの警部補を待ち構えていたのは、二十年前に起きた、ひどい暴行を受けて殺された兄妹をめぐる事件の捜査記録だった。当時寄宿学校に通う少年グループが捜査線上に浮かんだものの逮捕には至らず、その後自首してきた犯人が裁きを受け、今は懲役刑に服していた。しかし警部補の不在中に何者かがそっと机に置いた書類は、ほかにもまだ犯人がいることを告発しているかのようだった。例によってカールはしぶしぶ再調査に手をつけるが、次第に強まっていく上層部からの締めつけが、逆に彼の闘志に火をつけることに。
警察小説といえば、今やスウェーデンのヘニング・マンケルが世界最高峰だが、その強力なライバルは同じ北欧から現れたようだ。警察の捜査活動と並行して路上生活者のミステリアスな行動が語られていくが、このふたつの物語が並行する手法が、前作と同様本作でも効果をあげている。事件の構図は早い時点で察せられるが、それでもなお読者を引っぱる勢いが衰えないのは、犯人がどう裁かれるのかを見届けたいと読者に思わせる本作の吸引力だろう。自らも厳しい状況におかれながら、オプティミスティックな心を失わない登場人物もよし。現代社会の陥った悲観的な状況を鋭くえぐる問題意識の確かさにも注目したい。
[ミステリマガジン2012年2月号]

特捜部Q ―キジ殺し―― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1853)

特捜部Q ―キジ殺し―― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1853)