背後の足音/ヘニング・マンケル(創元推理文庫)

夏至の前夜に行方が知れなくなった若者たちは、どこへ消えたのか? 見過ごされかけた事件を調べることになったヴァランダーを、不意打ちのように部下の死が襲う。しかも生前その部下は、若者たちの事件を密かに追っていたことが明らかになる。
常軌を逸した犯罪を前にして、世界は悪くなる一方だと嘆く主人公。ヘニング・マンケルの『背後の足音』は、そのペシミスティックな世界観についつい引き込まれるヴァランダー刑事シリーズの第七作である。この作家ならではの社会性への特異なアプローチはさらに深みを増し、最後に浮かび上がる犯人像には慄然とせざるをえない。文句なしに警察小説の世界最高峰と呼んでいいだろう。
[波2012年1月号]

背後の足音 上 (創元推理文庫)

背後の足音 上 (創元推理文庫)

背後の足音 下 (創元推理文庫)

背後の足音 下 (創元推理文庫)