ウィンターズ・ボーン/デブラ・グラニック監督(米・2010)


デブラ・グラニック監督の『ウィンターズ・ボーン』から、多くの人が思い出すのはやはり女性監督の手になる『フローズン・リバー』(2008)だろう。インディペンデント系の映画祭としてはおそらくは世界最大級のサンダンス映画祭でグランプリに輝いたという共通点だけでなく、アメリカの荒涼たる大自然に現実の厳しさを重ね合わせているところで、ふたつの作品は見事にシンクロする。
ミズーリ州南部に広がる山脈地帯で暮らす十七歳の少女ジェニファー・ローレンスは、ドラッグの商売に手を染める父親と心を病んだ母親に代わって、幼い弟と妹を養い、一家を支えている。しかし保釈金の借金を残したまま父親は姿を消し、彼女は窮地に立たされてしまう。物語の背景には、ローカルな田舎町をも蝕むアメリカの闇が広がっているが、その中をタフに生き抜いていく若きヒロインの姿が鮮烈だ。見る者に勇気を与えずにおかない彼女の生き方は、ある意味崇高とすらいえる。家族愛や同胞愛を同じ視野にとらえながらも、冷たい空気を終始とぎらせないストイックな演出も光っていると思う。
日本推理作家協会報2011年12月号]
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