パンチョ・ビリャの罠/クレイグ・マクドナルド(集英社文庫)

義賊として、また革命の立役者として、メキシコの民衆の間では、今もその名を伝えられるパンチョ・ビリャ。最後は政敵の凶弾に倒れるが、死の三年後に墓を暴かれ、首を盗まれるという事件が起こった。犯罪小説の新鋭クレイグ・マクドナルドの『パンチョ・ビリャの罠』(集英社文庫)は、行方知れずとなった英雄の首をめぐる争奪戦の物語だ。
FBIやCIA、名門大学の秘密結社、殺し屋らを向こうに廻し、ミイラ化した頭蓋骨を正当なる持ち主に返すため大奮闘する犯罪小説作家ヘクターの運命やいかに。史実を生かした面白さに加え、ハリウッドで「黒い罠」を撮影中のオーソン・ウェルズや、それに出演しているマレーネ・ディートリッヒらが顔を出す豪華キャストには、映画ファンならずともニヤリとすることだろう。
[波2011年12月号]

パンチョ・ビリャの罠 (集英社文庫)

パンチョ・ビリャの罠 (集英社文庫)