スリーデイズ/ポール・ハギス監督(2010・米)


ハリウッドのリメイク依存症には毎度辟易させられるけれど、先の『モールス』(もとは『ぼくのエリ 200歳の少女』)と同様、いやそれ以上に目を瞠る再映画化となったのが、ポール・ハギス監督の『スリーデイズ』だ。オリジナルはフレッド・カヴァイエの『すべて彼女のために』(2008)だが、線が細いために夢想家の思いつきや妄想にもうつってしまったこのデビュー作は、しかしアイデアそのものは悪くなく、後にして思えば才人の習作だったことが判る。(事実、次作の『この愛のために撃て』でカヴァイエ監督を大いに見直すことになる)そんな印象の薄い原典をプロフェショナルの仕事で再構築してみせたのがこのポール・ハギス版のリメイクといっていいだろう。
ある朝、一家の団欒をこわしたのは、突然踏み込んできた警察だった。コミュニティカレッジで教鞭をとるラッセル・クロウと息子の目の前で、妻のエリザベス・バンクスは上司を殺害した容疑で逮捕されてしまう。嫌疑を晴らせぬまま三年が過ぎ、刑務所での生活に疲れた妻は自殺未遂を起し、息子の気持ちも母親から離れようとしていた。もはやこれまでと決意を固めた主人公は、自らの手で妻を刑務所から救い出す手立てを練り始める。オリジナルの基本アイデアに、大胆な肉づけを施した脚本の充実ぶりがなんといっても見事。いかにもハリウッド流のカーチェイスなど大味な部分もあるが、骨太になったドラマは小さなエピソードも大切にしている。ハリウッドのリメイクはこうあれ、というお手本のような映画だと思う。
日本推理作家協会報2011年11月号]
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