ブラックランズ/ベリンダ・バウアー(小学館文庫)

デビュー作でいきなり本年CWA(英国推理作家協会)賞のゴールドダガーに輝いてしまったベリンダ・バウアーだが、受賞作の『ブラックランズ』は、児童を狙った連続殺人で服役中のシリアルキラーと、被害者の家族である十二歳の少年が、手紙のやりとりを通じて心理戦を繰り広げる異色のスリラーである。前半は、互いに相手の思惑を読みきれない少年と殺人者の双方が疑心暗鬼に駆られるオフビートな展開だが、中盤からは少年に危機が迫るサスペンスフルな流れへと転じる。サイコスリラーの新機軸としてまさにアイデア賞ものだが、やや甘口ではあるものの、ひたすら家族を思う主人公少年の健気さがやはり印象に残る。
本の雑誌2010年12月号]

ブラックランズ (小学館文庫)

ブラックランズ (小学館文庫)