ベルファストの12人の亡霊/スチュアート・ネヴィル(RHブックスプラス)

殺し屋を主人公にした物語なんか星の数ほど読んできたよ、というすれっからしの読者も、この作品には驚かされるのではないか。スチュアート・ネヴィルのデビュー作『ベルファストの12人の亡霊』の主人公フィーガンは、かつて凄腕の殺し屋としてIRAの仲間内でも怖れられてきた殺し屋なのだが、なぜかある時から自分の仲間やボスたちを始末しはじめる。実は、彼には普通には見えない存在が見えていて、これまで実行してきたテロで犠牲になった死者たちが現れては、自分に代わり復讐を果たすよう求めるのだ。
和平路線に転換したIRAの実情を裏側から描く面白さもあって、そこに巣食う悪党どもの憎々しさがこれまた最高。作者は、亡き者たちへの畏怖と鎮魂に導かれる殺戮の旅と主人公の葛藤を克明に描き、まさに掟破りの殺し屋物語を生み出したといっていいだろう。
本の雑誌2010年9月号]

ベルファストの12人の亡霊 (RHブックス・プラス)

ベルファストの12人の亡霊 (RHブックス・プラス)