ソルト/フィリップ・ノイス監督(米・2010)

アンジェリーナ・ジョリーというと『トゥームレイダー』のララ・クロフト役を思い出す人も多いと思うが、そのスーパー・ヒロイン像のイメージそのままの彼女が再び登場するのが『ソルト』だ。アンジーの役どころは、CIAの女エージェント、イヴリン・ソルト。さる任務のさ中、北朝鮮に捉えられるものの、人質交換で無事生還を果たした彼女は、その際救出活動に力を尽くしてくれた恋人と結婚。その後は、夫との家庭生活とCIAの任務を両立させ、平穏な日々を送っていた。しかし、旧ロシア時代からの国家機密をアメリカ側に明かすというロシア特務機関の男の出現により、二重スパイの容疑をかけられた彼女は、CIAから追われることに。
上司のリーヴ・シュレイバーや防諜部のキウェテル・イジョフォーらCIAの追尾をかわしつつ、超人的な活躍を見せるアンジーは、いうなれば二十一世紀の女ジェイムズ・ボンドであり、ジェイソン・ボーンの女性版といったところ。シリーズ化を狙ったようなあざとさもあるが、アクションシーンの目白押しで、トゥームレイダー系のファンには眼福だろう。一方、輪郭が曖昧なまま繰り広げられていく物語が、終盤できっちりと観客の意表をついて像を結ぶ展開もお見事。監督は、『デッド・カーム/戦慄の航海』のフィリップ・ノイスで、『ボーン・コレクター』以来となるアンジーとのコンビネーションも悪くない。
日本推理作家協会報2010年8月号]
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