ザ・ロード/ジョン・ヒルコート監督(2009・米)

映画の完成が遅れ気味で、伝わってくる情報といえば、ホラー映画サイト経由の殺伐とした画像ばかり。さらに、唯一の監督映画がバイオレンス・ウェスタン(「プロポジション-血の誓約-」)らしいことなど、完成前は不安がつのったけれど、アメリカ本国での評判が上々だったので、期待して待っていたジョン・ヒルコート監督の『ザ・ロード』。ヴィゴ・モーテンセンとコディ・スミット=マクフィーの父子が、何らかの異変に襲われ、荒廃したアメリカの大地を、ひたすら南をめざしていく。
原作者のマッカーシーは、人間の邪悪さを描いた「ブラッド・メレディアン」に対し、「ザ・ロード」は人間の善良さが主題と語ったらしいが、それに補足することはあまりない。原作のテーマを視覚的な観点から咀嚼したのが、この映画だといってもいいだろう。サバイバル映画の一種として楽しむことも可能だが、人類の希望ともいうべき篝火が父親から次の者へと手渡されるラストシーンは実に感動的。出番は多くないが、ロバート・デュバルガイ・ピアースの登場も印象に残る。
日本推理作家協会報2010年7月号]
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