サベイランス/ジェニファー・リンチ監督(2008・加)

さまざまな風評を呼んだ「ボクシング・ヘレナ」から十五年、ジェニファー・リンチの監督復帰作は『サベイランス』というサイコスリラーだ。サンタ・フェの田舎町で起きた無差別殺人は、カップル、休暇に向う親子、警察官ら五人が犠牲になり、FBIが捜査に乗り出した。地元警察署に駆けつけたビル・プルマンジュリア・オーモンドのコンビは、モニターなどの機材をセットし、事件を目の当たりにしたばかりの三人の生存者から事情聴取を開始する。
事件のショックから思うように口がきけない証人たちの話から事件の全貌が明らかにされていく展開だが、調べが進むにつれて、腐敗した田舎警察、新しい父親との家族旅行に出た一家、麻薬に溺れる無軌道なカップルらのプロフィルが浮かんでくるあたりは実にうまい。終盤、俄に浮上する意表をつく真相は、一部で「不条理」とも評されているようだが、さりげなくではあるが伏線もあるし、十分に説明もなされている。脚本家ケント・ハーパーとのコンビネーションで、父親デヴィッドの世界とは一線を画した娘ジェニファーの仕事ぶりが伺える。
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