最後の吐息/ジョージ・D・シューマン

ジョージ・D・シューマンの『最後の吐息』は、盲目の超能力者シェリー・ムーア・シリーズの第二作にあたる。ヒロインのシェリーは、死者の手を握ることによって死に際の記憶を読み取ることが出来るが、その特殊な力を捜査当局から見込まれて、前作『18秒の遺言』では連続女性誘拐事件で警察に協力した。しかしその過程で負った精神的なダメージは大きく、事件後の今もそれをはらうことが出来ないままでいる。
そんな引篭もり状態だったシェリーを再び事件の現場へと向かわせたのは、メリーランド州法務長官のシフだった。カンバーランド渓谷の山中にある廃工場の冷凍コンテナの中から、三体の女性の遺体が見つかり、非公式にシェリーへの協力要請が発せられる。ところが、その行動がマスコミの目にとまることとなり、容赦ない報道に晒された彼女は、またもや苦境に立たされ、服用していた薬の過剰摂取で入院を余儀なくされてしまう。一方、女性たちを手にかけた殺人犯も、シェリーの行動に目を光らせ、入院中の彼女の背後に迫るが。
スティーヴン・キングもこのシリーズを絶賛しているそうだが、それは超能力者の悲劇というシリーズの側面に注目してのことだろう。その主題をめぐっては、読者の心をも蝕みそうな暗鬱な空気が、前作以上に支配的。しかし、ミステリとしての作りという点でもスキルアップが図られていることから、フーダニット的な興味で読者の気持ちを逸らさない工夫があって、読み辛さはない。幕切れの一節も実に鮮やかに物語をしめくくる。
[ミステリマガジン2010年4月号]

最後の吐息 (ヴィレッジブックス)

最後の吐息 (ヴィレッジブックス)