拮抗/ディック・フランシス&フェリックス・フランシス(早川書房)

「再起」で鮮やかな復活を遂げ、その後は父ディックと息子のフェリックスのフランシスの親子連名作品となった新競馬シリーズも、『拮抗』で早や四作目。今回の舞台に選ばれたのは、競馬専門のブックメーカー(賭け屋)の世界で、英国競馬界におけるオッズを操作する大手と零細の個人事業主の確執の構図が浮かび上がる。
次々と起きる不可解な事件が主人公を追いつめていく展開は確かにサスペンスフルだが、あざとさが鼻につくきらいがあるし、主人公の血縁に隠された秘密は、さすがに作り過ぎだろう。しかし、そこで殺がれたリーダビリティを挽回するクライマックスでの盛り上げは実に見事。気持ちよく幕を降ろしてくれるラストシーンまで、間然するところがない。
本の雑誌2010年3月号]

拮抗 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

拮抗 (ハヤカワ・ノヴェルズ)