狼の死刑宣告ジェームズ・ワン監督(2007・米)

作家のブライアン・ガーフィールドと映画の縁は浅からぬものがあって、エドガー賞に輝いた「ホップスコッチ」の映画化をはじめとして、チャールズ・ブロンソン主演で映画化された「狼よさらば」(スタローンによるリメイクの噂あり)、さらにはウェストレイクとの共同で「W/ステップファーザー」というホラー映画の脚本も書いたりもしている。その彼が七十年代に発表した「狼よさらば」の姉妹篇的な作品を、「ソウ」ジェームズ・ワン監督が映画化したのが『狼の死刑宣告』だ。投資会社の重役ケビン・ベーコンは、ある晩立ち寄ったガソリンスタンドで地元ギャングの襲撃事件に巻き込まれ、高校生の長男を殺される。逃げ遅れた一味のひとりが逮捕されるが、有罪でもせいぜい五年の禁固刑と知り、ケビンは罪状認否手続きで証言を偽り、無罪放免にしてしまう。その晩、慣れない武装姿で相手に忍び寄った彼は相手をしとめ、まんまと復讐に成功するが、それを逆恨みしたギャングの一味は、一家皆殺しの通告を突きつけてくる。最後は、追いつめられ、満身創痍となった主人公が立ち上がるという定石どおりの展開だが、かっこよさよりも素人臭さが先にたってしまう暴力のアマチュアぶりを、ケビン・ベーコンが見事に演じてみせる。一方、脇役ではあるがジョン・グッドマンが演じる武器商人の悪人役が強烈。警察に頼らず、市民自らが眼には眼の精神で悪に立ち向かう映画をビジランテ(自警団)ムービーと呼ぶらしいが、激しいガン・アクションのカタルシスよりも、ラストシーンの苦い余韻が後味となって残る作品だ。
日本推理作家協会報2009年11月号]
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