幽霊の2/3/ヘレン・マクロイ(創元推理文庫)

テレビの某番組*1人気の後押しもあってか、まさかのリバイバルを果たしたヘレン・マクロイの『幽霊の2/3』。衆人環視のもとで変死を遂げた作家の死をめぐる作品で、レギュラー探偵の精神科医ベイジル・ウィリングも登場するし、ある有名なトリックが使われていることでも知られる本格ものだが、今回の訳文のリニューアルによって、ひとりの人間をめぐる虚像と実像が錯綜するマクロイお得意の二重像のテーマが、より鮮明になったと思う。本作の再評価につながる改訳、リバイバルといっていいだろう。ベストセラー作家と出版業界をめぐる舞台裏の物語としても面白い。
本の雑誌2009年11月号]

幽霊の2/3 (創元推理文庫)

幽霊の2/3 (創元推理文庫)

*1:33分間探偵