ミスター・ディアボロ/アントニー・レジューン(扶桑社海外文庫)

「血染めのエッグ・コージイ事件」等のジェームズ・アンダースンに再評価の光をあてたり、「ケンブリッジ大学の殺人」のグリン・ダニエルを発掘したりと、〈扶桑社ミステリー〉の本格ミステリ路線は、細々とではあるが、通好みだ。今回出た『ミスター・ディアボロ』も、そんな一冊。アントニー・レジューンという作家は、わが国でもほとんど知られていないが(レジュネ、レジャーン名で若干の翻訳あり)、この作品はその作者ほぼ唯一の本格もので、人間消失や密室殺人を正面から扱ったガチガチのパズラーだ。名探偵然とした人物も賑々しく登場する、知られざる名品と呼ぶに相応しい一編である。
[本の雑誌2009年11月号]

ミスター・ディアボロ (扶桑社ミステリー レ 8-1)

ミスター・ディアボロ (扶桑社ミステリー レ 8-1)