ピザマンの事件簿 デリバリーは命がけ/L・T・フォークス(ヴィレッジブックス)

帯の「ジョー・R・ランズデール絶賛!?」も賑々しい、オハイオ在住の謎の作家L・T・フォークスの『ピザマンの事件簿 デリバリーは命がけ』である。妻の浮気がきっかけで、酒に酔って暴れた結果が、実刑判決の刑務所暮らし。そんな散々な目にあった主人公のテリー・サルツだが、やっと年季も明けて、親友ダニーの狭い屋根裏部屋に転がり込み、新しい生活を始めることになった。まずは食い扶持を稼がねばと、彼はピザの店〈カーロ〉に就職し、デリバリーの仕事を始める。個性的だが、気のいい仲間たちにも恵まれ、元大工の腕を活かして、デッキを作る仕事も引き受けたりしながら、まずは順風満帆の日々を送るテリーだったが、ある晩、職場の嫌われ者だった青年が、店の駐車場で死体になって発見される。前科者の彼を容疑者扱いする警察を見返せとばかりに、テリーは〈カーロ〉の仲間たちを率いて、事件の捜査に乗り出すが。
なんといっても、男気たっぷりで友情に厚い主人公とその仲間たちが最高だ。登場人物たちの個性をくっきりと描く達者さは、ときに巨匠レナードを思わせたりもする。それに較べて、事件の部分がやや弱い気もするが、ピザ店チームの繰り広げる大活躍には、スカッとした爽快感があって、最後まで読者の気持ちを掴んで離さない。?働く男のミステリー?と銘打たれたこのテリーとその仲間たちのシリーズは合計三作書かれているようだが、残る二作も早めにデリバリーをお願いしたいところだ。
[ミステリマガジン2009年8月号]

ピザマンの事件簿 デリバリーは命がけ (ヴィレッジブックス)

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