ダイアナの選択/ヴァディム・パールマン監督(2008・米)

人生の究極の選択をテーマにした作品といえば、個人的にはアラン・J・パクラの『ソフィーの選択』が思い浮かぶが、『ダイアナの選択』でヒロインのエヴァン・レイチェル・ウッド(役名ダイアナ)が迫られる選択も、それに負けず劣らず厳しいものだ。コロンバイン高校を思わせる乱射事件に巻き込まれた女子高生のダイアナとエヴァ・アムーリは、マシンガンを構えた犯人から、こう告げられる。「どちらか一方を殺す。死ぬのはどっちだ?」。「自分を殺して」という親友のエヴァに対し、銃口を向けられたダイアナが選んだのは…。そこで場面が変わり、事件から十五年が経過している。生き残ったユマ・サーマン(三十二歳のダイアナを彼女が演じる)は、結婚相手の大学教授との間に娘もいて、何不自由なく暮らしている。しかし、順風満帆の日々を送りながらも、過去の事件のトラウマが少しづつ彼女の日常を蝕み始めるあたりから、何かあるぞという期待感が高まっていく。演出がややきめ細かさを欠くせいか、結末は説明不足な印象もあるが、その大胆不敵さにかけては前代未聞。オチが理解できなかった観客のために、最後にパスワードが出て、ネットでヴァディム・パールマン監督が自ら真相を教えてくれるというフォローが用意されていたのには笑ったが。
日本推理作家協会報2009年7月号]
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