チェイサー/ナ・ホンジン監督(2009・韓)

ナ・ホンジン監督の『チェイサー』は、いち早く試写を観た評論家やブロガーは絶賛だったし、カンヌやゆうばりファンタで評判をとった実績もあって、期待するなという方が難しい状況の中で初日に観たのだけれども、期待値の高さも災いしたか、がっかりさせられた。二○○三年に韓国で起きた連続殺人事件を題材にしているらしく、元刑事だが今はデリヘルの元締めをやっているキム・ユンソクが、ソ・ヨンヒら配下の女たちが理由もないままに姿を消したことから、怪しい客のハ・ジョンウに疑惑を抱き、彼を追う。映画で描かれる韓国の警察は一様に杜撰だが、本作ではそれがさらに甚だしく、観ていて呆れ返ってしまう。一度は官憲の手におちた犯人のシリアルキラーが、いともあっさりとその手をすり抜けていくなどの展開には、権力批判の意図や、物語を面白い方向へころがす狙いもあるのだろうが、観る側の緊張感は切れまくりで、白々した気分にさせられる。絶妙のイントロや、キム・ユンソクが消えたソ・ヨンヒの幼い娘の手を引きながら、子連れで調査を進めるくだりなど、部分的には惹き付けられる場面もあるし、退屈はしないんだけどなぁ。どうしても最後の最後まで今ひとつ気持ちが乗れなかった。ディカプリオがリメイクするらしいハリウッド版は、どうなるのだろうか。
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日本推理作家協会報2009年7月号]