フェイクシティ ある男のルール/デヴィッド・エアー監督(2008・米)


クリント・イーストウッドが「チェンジリング」で克明に描いた悪の病巣はびこる二十年代ロサンジェルスは、やがてジェームズ・エルロイの描くそれと見事に繋がっていくわけだが、デヴィッド・エアー監督の『フェイクシティ ある男のルール』には、そのエルロイ自らが脚本チームに加わっている。ロス市警の刑事キアヌ・リーブスは、凶悪事件を解決するためなら手段を選ばない男。独断専行する彼を上司のフォレスト・ウィテカーは庇うが、捜査チームの中でも彼は浮いた存在だ。かつての相棒テリー・クルーズが、彼の違法な捜査を内部調査室にタレこんだと聞いて、頭に血がのぼるキアヌだったが、武装強盗とおぼしき二人組との銃撃戦でテリーは死んでしまう。妻の死をひきずり、強引な捜査を行う一匹狼の刑事という主人公はいかにもエルロイ好みだが、それを演じるキアヌは、もともと表情に乏しいところがあって正直いまひとつ。しかし、銃撃事件を担当する若いクリス・エヴァンスを従え、キアヌが強引に真相に迫っていこうとする終盤の急展開には、なかなかの吸引力があって、警察組織の腐敗や、毒をもって毒を制するという正義のあり方に、エルロイのほくそ笑みが見えるようだ。出番は多くないが、内部調査室の警部を演じるゴールデン・グローブ賞俳優のヒュー・ローリーの存在感が、ピリリと辛口でいい。
日本推理作家協会報2009年4月号]
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