黒衣の処刑人/トム・ケイン(新潮文庫)

エンタテインメントの分野では新人の扱いだが、トム・ケインはジャーナリストとしての長い経験や映画の脚本を書いたこともある人のようで、なるほど『黒衣の処刑人』は、デビュー作でありながら、それら豊富なキャリアの裏打ちもあって、完成度高いエンタテインメント小説に仕上がっている。元特殊部隊員の主人公は、テロリストらを秘密裏に処刑する仕事を闇の組織から請け負っている。しかし、これを最後に足を洗おうと引き受けた仕事で仕留めたのは、なんと元英国皇太子妃だった。とにかく、謎また謎で畳み掛けてくる前半が素晴らしい。後半のロマンス色は、ややサスペンスを殺しているきらいがあるけど、読ませる力に不足はない。
[本の雑誌2009年1月号]

黒衣の処刑人〈上〉 (新潮文庫)

黒衣の処刑人〈上〉 (新潮文庫)

黒衣の処刑人〈下〉 (新潮文庫)

黒衣の処刑人〈下〉 (新潮文庫)