犯罪王カームジン あるいは世界一の大ぼら吹き/ジェラルド・カーシュ(角川書店)

昨今の短編小説ブームの先駆けとなったジェラルド・カーシュは、先年本国でシリーズ全作が発掘され、それが一冊にまとめられた『犯罪王カームジン あるいは世界一の大ぼら吹き』が翻訳された。タイトルからも伺えるように、世紀の大犯罪者を名乗る人物がカーシュ本人とおぼしき語り手にに聞かせるホラ話集なのだが、カームジンという誇大妄想気味の老人に憎めない愛らしさがあるし、一篇ごとのアイデアもなかなか気が利いている。最初はコント風だったものが、作品を追うごとに短編小説としての体裁を整え、それにともなって読み応えも増していくあたりも嬉しい。シリーズ十七作に追加されたボーナストラック二作もなかなかの出来映え。
本の雑誌2009年1月号]