ワイルド・バレット/ウェイン・クラマー監督(2006・米独)

劇場で予告編を観て、コレは絶対に面白いに違いない、と直感したのがこの『ワイルド・バレット』だ。監督のウェイン・クラマーはインディペンデント系の人だが、その斬新で大胆な映像表現にまず目を奪われる。しかし、タランティーノもかくやの視覚的に派手な面白さは序の口で、やがてサスペンスフルで、罠へと導く巧妙な物語の渦へと観客を引き込んでいく。マフィアの連中とつるむチンピラのポール・ウォーカーは、彼らからヤバい仕事に使った銃の始末を命じられた。彼は、いったん銃を持ち帰るが、息子の遊び友だちが黙ってそれを持ち出し、クレイジーな父親に向けて発砲してしまう。ポールは、銃と少年の行方を必死に なって追いかけるが。夜の町を逃げまどう少年役を、「記憶の棘」にも出ていたキャメロン・ブライトが好演。ほかにも、悪徳警官のチャズ・パルミンテリは不気味だし、夫顔負けの大活躍を見せる妻のヴェラ・ファーミガもチャーミングと、またとない配役陣が素晴らしいが、マフィアから執拗な追及を受け、崖っぷちに立たされるポールに感情移入しながら迎える大団円の不意打ちには、完全にKOされました。タイトルバックに流れる不気味な「不思議の国のアリス」のモチーフも独特の雰囲気を醸し出している。
日本推理作家協会報2008年12月号]
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