訃報(ドナルド・E・ウェストレイク)

年の瀬も押し迫った2008年12月31日、メキシコのサン・タンチョで休暇を過ごしていたドナルド・E・ウェストレイクが死亡。大晦日のディナーへと向う途中に、心臓発作を起こしたらしい。享年75。長編、短編、映画脚本の3部門でエドガー賞に輝き、1993年には巨匠賞も受賞している文字通りの大御所だが、還暦を迎えて以降も健筆をふるい、「斧」や「鉤」という秀作(ともに文春文庫刊)を世に送り続けていた。2006年に出たドートマンダーものの「バッド・ニュース」が現時点で翻訳紹介された最後の作品だが、全キャリアにわたりまだまだ未紹介作が残されているので、各出版社のみなさん、くれぐれもよろしく。別名義がいくつもあることでも有名だが、「刑事くずれ」のタッカー・コウ名義とともに人気があるのは、リチャード・スターク名義の〈悪党パーカー〉で、途中にブランクはあったが40年以上にわたって続いている息の長いシリーズだった。ミステリ界は偉大な才能を失ったと思う。