ブロークン/ショーン・エリス監督(2008/英仏)

ポーの「ウィリアム・ウィルスン」の一節が作中に引用される、ファッション写真家出身のショーン・エリス監督による『ブロークン』。ロンドンの病院に勤務する放射線技師のレナ・ヘディは、父親の誕生日を祝うために兄弟たちと実家を訪れるが、パーティのさ中、居間の鏡が大きな音とともに粉々に砕け散ってしまう。その翌日、自分に瓜二つの人物を見かけた彼女は、交通事故で前後の記憶を喪失。それを境に不思議な出来事に 襲われ、信頼を寄せていた恋人のメルヴィル・プポーにも違和感を抱く。彼女の相談を受けた医者は、近親者を替え玉だと思い込むカプグラ症候群ではないかと 疑うが。かなりエグい場面もあるけれど、英国調とでもいうべきダークな色調が全編に漂う。オーソドックスなホラーだと思わせておいて、一気に観客の足許をすくう監督の手の内に、終盤で頬をはたかれた思いがした。いやはや、これだからホラー映画は油断は禁物なのである
日本推理作家協会報2008年12月号]
》》》公式サイト